愛され女子の激甘コレクション
自虐的な笑いがこみ上げてきて、思わずお雛様を掴む。
お雛様を触るときには必ず手袋をしなさいって、いつも怒られていたのに。

「私は仁志さんのお雛様じゃないっ」
私の手から離れて宙を舞ったひな人形は、あっけなく床に落ちて大きな音を響かせた。

「あ……」
違う。こんなことがしたかったんじゃないの。
頭の飾りと扇子が外れてしまった人形を抱えて「ごめんなさい。ごめんなさい……」と呟く。

「どうしたの?」背中からかけられた声に身体が強張って、ひな人形を強く抱きしめた。
泣いたまま何も答えない私に、彼は穏やかな声で尋ねてきた。

「お雛様じゃないって、どういう意味?」

聞かれてたんだ……。

「何でも、ない、です……」
精一杯言葉を絞り出す。

「何でもなくないだろ。俺のお雛様って、どういうこと?」
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