日本一のヤクザ幹部は、本当は私を溺愛している。
高級料亭に着くと
3台黒塗りの高級車が止まっている。


多分全て妃瀬 宏輝の物だろう。


「鹿妻 悠月様でしょうか?」


入口の近くにいた
黒服の1人が話しかけてくる。


瀬谷がこちらを見るので頷くと
瀬谷が挨拶している。


そいつらをすり抜け料亭内へ入る。


颯馬は驚いてるようだが無視をする。


宏輝の部下に割いている時間はない。


部下がいるということは
宏輝はもう既に着いていると言うことだ。


これ以上待たせるのは得策ではない。


優秀な女将は
すぐに俺を宏輝の元へ案内する。


女将の開けた襖の奥には


「やぁ、久しぶりだな悠月。」


老いを知らない。
妖怪のような男、妃瀬 宏輝が座っていた。


「お久しぶりです、宏輝様。
お待たせして申し訳ありません。」


立ったまま頭を下げる。


妃瀬は勝手に座るのを嫌う。


「ははっ、君はいつまでたっても
他人行儀だな。

座りなさい。」


「失礼します。」


宏輝とは反対側の席に着く。


「昔の生意気さが懐かしいな」


「お恥ずかしい限りです。」


そんな会話を交わしながら
酒を注ぎつつ食事に勤しむ。


「あぁ、こんな無駄なことを
ベラベラと30分も話してしまったね。」


ちらりと腕時計を見ると俺が入室して
きっかり30分経っている。


宏輝が時計を見る行動はしてない。


もちろんこの部屋に時計は存在しない。


これが妃瀬(化物)


俺たちは妃瀬の無駄な話でも一言一句
気を使い、機嫌を伺いながら
発音しなければならない。
< 6 / 14 >

この作品をシェア

pagetop