日本一のヤクザ幹部は、本当は私を溺愛している。
襖が開かれる。


そこには先程よりもいいスーツに身を包み
美しい顔に合うように髪も整えられ
先程よりも凄みが出ている悠月様がいる。


悠月様が先頭を歩き
俺が数歩後ろを、
颯馬が更に後ろを、
だが、1歩で届く距離を歩く。


「渉から連絡は来てるか?」


「はい、先程一通」


「よめ」


「失礼します。
『久しぶりだな悠月。
今回は多分有意義な食事会になるだろう
また会えるのを楽しみにしてる。』

以上です」


「わかった。」


悠月様のわかったは、消せと言う意味だ。


スマホのメールを削除する。


「時間は」


「お食事は6時から、後で3時間ほどあります」


「1時間前には着け」


「かしこまりました」


車の扉を開けると悠月様が乗り込む。


助手席に乗り、
颯馬は後ろの車に乗り込む。


「出せ」


運転手に指示を出すと緩やかに滑り出す。


ミラーで悠月様を盗み見る。


顔色も何もお変わりはない。


今日の食事の相手は妃瀬組、
しかも妃瀬家の長男宏輝様だ。


油断はもちろん
緊張を解くことすら許されない。


大物相手でそばに控えるだけといっても
緊張してしまう。


緊張の欠片も見せない悠月様に
噂など信用出来るわけが無い
そう確信する。
< 5 / 14 >

この作品をシェア

pagetop