極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「急に来てごめん。たまたま次の打ち合わせまでに時間が空いて」
「いえ、ご来店ありがとうございます」

 知り合いとはいえ仕事中。
 客に対して失礼のない態度をとる文香を見ていたアランは「へぇ」と感心したようにつぶやいた。
 
 まじめな彼女を、どうやらお気に召したらしい。
 
 上品なイギリス紳士といった華やかな容姿のアランと、葉山製薬の御曹司である俺。
 ふたりが一緒にいるとよくも悪くも人目を引き、下心をもった女性から言い寄られることが多いからだ。
 
 アランは胸ポケットから名刺を取り出し文香に渡す。

「私、秘書の黒川アランと申します」
「ありがとうございます。すみません。私、名刺を持っていなくて。結貴さんの大学時代の友人の白石文香と申します」

 文香は両手で名刺を受け取り、自分の名前を名乗る。

「アランさんは、秘書をされているんですね」
「もしこの先うちのボスがなにか迷惑をかけたら、遠慮なく私に相談してください」

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