極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

　いつもとは違う不穏な空気に戸惑いながら首を横に振る。

「白石さんの味方は俺だけだって言ったじゃないか。俺は君だけを見てきたのに、ほかの男によそ見をするなんてダメだよ」

　店長の手がのびてきて私の腕を掴んだ。
　その手の感触が不快で、肌がざわり粟立つ。
　
　指先の色が変わるほど力を込められ、痛みに顔をゆがませながら口を開く。

「な、なにを言っているんですか？」
「いつも陰口を言われていじめられる白石さんを、はげましてきたのは俺だろう？」

　親切そうな口調で言う店長の目の奥は真っ黒に見えた。

　どうしよう、なんだか怖い。

　そう思ったとき、店長の体が急に離れた。
　驚いて顔をあげれば、険しい表情の結貴が店長の肩を掴んでいた。

「い、痛い……！　なんだよ急に！」

　店長の口調が荒くなる。
　それとは反対に、結貴はぞくりとするほど落ち着いた低い声で言う。

「失礼。彼女がいやがっているように見えたので」