極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「ま、不器用にもだもだしてるのを観察するのも面白いからいいけどね」

 にやにやと笑われて、仏頂面で視線をデスクの上に資料に戻す。

「で、土曜の予定はどうされますか? 副社長のご希望なら三ツ星のレストランでも高級ホテルのスイートでもヘリでもクルーズでもなんなら海外でも、なんでも手配いたしますよ」

 アランの言葉に少し考え首を横に振った。

「いや。必要ない」

 彼女はそんな豪華な誕生日を望んだりしない。
 彼女を喜ばせるのは、お金じゃなくもっと素朴で温かいものだ。
              
               

 翌週の土曜日、俺は文香の自宅にいた。
 未来ちゃんとふたり並んで玄関で靴を履く彼女を見つめる。

「ごめんね、結貴。本当に未来を任せていいの?」

 文香は靴を履いた後も、確認するように聞いてきた。

「大袈裟だな、数時間留守にするくらいだろ。それに、俺も未来ちゃんとのんびりできると癒されるし」
「うん! のんびりするの!」

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