極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 青ざめた顔でこちらにかけてきたのは、結貴のお母様だった。
 その後ろから、長身のアランさんも歩いてくる。

「かあさん、どうして」
「アランさんから、結貴が強盗にあって病院に行ったって知らせを聞いて、驚いて……」
 
 結貴はアランさんにも電話していたから、気を利かせて実家に連絡してくれたんだろう。
確かにその話を聞いたら、心配して駆けつけてくるのも無理はない。

「俺はどこもケガをしていないから、大丈夫」
「そう、よかった」

 お母様はほっとしたようにうなずいた。
 そして結貴の隣に座る私を見て、目を見開いた。

「あなた、文香さん……?」

 戸惑いの混じる声で名前を呼ばれ、背筋が震えた。
けれど、ぎゅっとこぶしをにぎりしめ、顔を上げる。

「ご無沙汰しています」
「どうしてあなたが。結貴と別れてくださいとお願いしたはずなのに……」

 その言葉を聞いて、結貴の顔色が変わった。
 お母様と私を見比べ、全て理解したように綺麗な眉をひそめた。

< 175 / 197 >

この作品をシェア

pagetop