極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「ここは浴室じゃなくて脱衣所だからセーフ」
「セーフじゃないよ……っ」
「ごめん。五年も想い続けた文香をようやく手に入れたんだ。だから、もう我慢できない」

 こちらを振り返った文香に余裕のない声で言うと、文香は少し眉を下げたあと俺を受け入れてくれた。

 快感に体を震わせる文香の額は、うっすらと汗ばんでいた。
 俺は指で前髪を払い、紅潮した額にキスを落とす。
「文香、ありがとう」
 
 文香は快感にとろけた瞳をまたたかせこちらを見上げた。

「未来を産んでくれて、育ててくれて。ずっと俺を想い続けてくれて、ありがとう」

 そう言うと、文香は微笑んで「うん」とうなずく。

「私こそ、未来も私も受け入れて愛してくれて、ありがとう。これからは三人で、幸せになろうね」

 そして俺たちは、五年の時間を取り戻すように、きつく抱きしめ合った。
                
                  




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