極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 けれど頭の中は混乱したままだ。

 わざわざ直接返してくれと頼むなんて。
 もしかして勘のいい祖父は、未来の父親が彼だって気付いた……?

 冷や汗をかきながら様子をうかがったけれど、祖父は穏やかな笑みを浮かべていて、なにを考えているのかわからない。
 
 そのとき未来が私の服のすそを掴んだ。

「ね、ママのおともだち?」

 細い首をこてんとかしげ、興味津々の顔で結貴を見上げる。

「ええと」

 私が口ごもるのと同時に、結貴が驚いたように息を飲んだ。

「ママって、文香の子供なのか……?」

 そう問われ、言葉に詰まる。

「文香は指輪をしていないし、結婚はしていないんだよな? 父親は……」

 矢継ぎ早に聞かれうろたえていると、私の代わりに未来が答えた。

「パパはね、とっても遠いところにいるから、みらいは会ったことがないの」
「遠いところ?」
「そう。ちがう世界にすんでいるの」

 こくんとうなずいた未来に、結貴は綺麗な眉をわずかにひそめた。

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