極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 未来は、私が父親の話をしたときに、住む世界の違う王子様のような人、と言ったのを覚えていたんだろう。

「そうか……」とつぶやいた結貴は、父親とは死別したと受け止めたようだ。
 
 自分の子供じゃないかと疑われずに済んでよかった。
 私はほっと胸をなでおろす。
 
 結貴はしばらく黙り込み、なにか苦いものを飲み込むような辛そうな顔をした。
 
 そして大きく息を吐きだすと、気を取り直した様子で笑みを浮かべる。

「お名前は?」
「しらいしみらいです!」
「いい名前だね」

 結貴に優しく微笑みかけられた未来は、照れたように首をすくめて笑う。

「俺は葉山結貴です」
「ゆうきさん?」
「うん。未来ちゃんのママとは、大学時代のお友達なんだ」
「じゃあ、ママとおんなじとし?」
「ママより二歳年上だよ。未来ちゃんは何歳?」
「よんさいです」

 小さな手で四を作り自慢げに見せる。

「四歳……」

 なにか思案するようにつぶやいた結貴を見て、私は慌てて会話に入った。

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