極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「それでもいい。ただ、文香の力になりたいんだ」

 まっすぐな気持ちが伝わってきて、涙がこみあげてくる。

 私が唇をかんだとき、背後で「ううん……」と小さく未来がみじろいだ。

 はっとしてふたりで振り返ると、未来がころりと寝返りをうって体をこちら側に向けた。
目をつむったまま、すぐそばにあった結貴の服のすそを小さな手できゅっとつかむ。

「パパ……」

 舌ったらずな口調で言って、またすやすやと寝息をたてる。
 
 結貴は小さく息をついて微笑むと、未来を見下ろした。
 優しい手つきで未来の髪をなでる。
 その自然な仕草には、確かに愛情がこめられていた。
 
 結貴は視線をゆっくりとこちらに戻すと、まっすぐに私を見つめる。

「文香。俺を未来ちゃんと文香のそばにいさせてくれないか」

 真剣な声で言われ、胸が張り裂けそうになった。
 彼の言葉に素直にうなずけたら、どんなにいいだろう。
 
 けれど、未来が結貴の子供だと知られたら、間違いなく勝手に産んだことを責められる。
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