極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
キッチンで手を動かしながら、結貴に抱っこされた未来はとてもうれしそうだったなと思い返す。

 店内には親子連れがたくさんいて、父親に抱っこされている子もいた。
 
 私とふたりのときはそんなそぶりを見せないけれど、もしかして未来はほかの家族をうらやましく思っていたのかな。
 抱っこしてもらいたいという気持ちを、いつも我慢していたのかな。
 
 そう思うと、胸がちくりと痛んだ。
          

「さ、お昼ごはんができたよ」

 料理が出来上がり声をかけると、未来が「わぁい!」と笑顔になる。
 結貴は立ち上がり「運ぶの手伝うよ」とお皿やコップを運んでくれた。
 
 私が作ったのはアジフライとエビフライ。
 そしてナスやオクラ、ピーマンなどの野菜も一緒に揚げた。
 タルタルソースは二種類。
 オーソドックスなものと、ミョウガやネギといった香味野菜が効いた和風のもの。
 
 作り置きしてあった人参と小松菜のナムルや白菜の甘酢漬けも小鉢に入れて出す。

「なんだか庶民的な料理でごめんね」
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