極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 スケッチブックを両手に持ち、もじもじした様子でこちらを見ている。

「未来、見せたいものがあるんだよね?」

 文香が声をかけると、未来ちゃんはうなずいてこちらに近づいてきた。
 そして、細い首をこてんとかしげて俺を見る。

「ゆうきさんのおひざのイスに座ってもいい?」

 遠慮がちにたずねられ、一気に頬がゆるんだ。
 そんなかわいいお願い断れるわけがない。

「どうぞ」とうなずくと、ぷくぷくのほっぺがぱぁっと紅潮する。

 未来ちゃんは膝の上にちょこんと座り、振り返って俺を見上げた。
 持っていたスケッチブックで口元を隠し「えへへ」とはにかむような笑みを浮かべる。

「みらい、また絵をかいたから、ゆうきさんに見せてあげるね」

 俺の膝の上でスケッチブックを開く。
 小さな手が色とりどりの絵が並ぶページをぺらぺらとめくる。
 
 その様子を眺めていると、未来ちゃんの手が一枚の絵で止まった。

 一面美しい青で塗られた絵だった。
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