極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 空からひらひらと花びらが舞い落ちているように、あちこちに色とりどりのかけらが見える。
 
 そんな青い空を背景に、三人の背丈の違う人物が立っていた。
 
 丸みのある白い指が青い絵の中のひとりを指す。

「これ、ゆうきさん!」と言われ、俺は目をまたたかせた。

「……俺?」

 驚いて言葉につまる。

 絵の中央に描かれた三人は、みんな笑顔だった。
 空だと思っていたけれど、絵の隅々まで見てはっとする。
 
 これは、先週三人で行った水族館の絵だ。

「これがゆうきさんで、まんなかがみらいで、こっちがママ」

 色とりどりの魚が泳ぐ大きな水槽の前で、小さな未来ちゃんを真ん中に、三人で手を繋いだ絵。
 それは幸せな家族の姿そのもので、俺が小さな頃からあこがれ続けてきたものだった。
 
 俺は裕福だけど形だけの冷え切った家庭で育った。
 こんな風に両親と三人で手を繋いで笑ったことなんて一度もなかった。

「ゆうきさんに連れて行ってもらったすいぞくかんが、とってもすてきだったからかいたの」
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