隣のキミをもっと溺愛、したい。
すると、エレベーターのなかで、
ばったりと礼くんに会った。


礼くんは今、
ひとつ上の階で一人暮らしをしている。


「羽衣、なにかあったの?」


「どどど、どうして!」


「いつもに増して挙動不審。
顔、真っ赤だし」


ドキッ。


「そ、そんなこと、ないよっ」


「ふーん、ま、いいけど」


インターナショナルスクール出身で
海外暮らしも経験している礼くんは、

たまに距離が近かったりするけれど、

礼くんにドキドキしたことなんて
一度もない。

礼くんに手を振り、
いつもの階でおりる。

かけ足で家に入ると、
扉を背中で閉めて頬をおさえた。


こ、これって、
本当にあったことなのかな?


こんなのドキドキしすぎて、
たまらないよっ。


今日あったことを思い出すだけで
胸がキュンとして、

息が苦しくなる。


一ノ瀬くんに見つめられるだけで、
ドキドキして心臓が破裂しそうだった。

ぼんやりしている一ノ瀬くんも、
ちょっと怖い一ノ瀬くんも

どんな一ノ瀬くんにも、
ドキドキが止まらなかった。


もう、普通ではいられない。


目をつぶると、
一ノ瀬くんの言葉が胸のなかで響く。


『他の男のものにならないで』


『それまでに、俺のこと好きになれよ』


『俺、ホントは今すぐにでも天野にキスしたいんだけど』


きゃ、きゃーーーーっ!!!
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