悲しい魚

出会いの日

声をかけてきたのは、
ライのほうからだった

アタシは、ライブハウスの熱帯魚に
餌をやっているところだった
首筋に生ぬるい息の感じ…

「ソレ、なんていうの?」

振り向けば、ライが私の頬まで顔を近づけていた
その近さにどきっとした
ライはいつだって、
人との距離が近い。
特に、獲物をみつけたときは

「アルビノ。
アルビノ、ゴールデンペールテールエンゼル。金色で、きれいでしょう」

アタシは、
水槽の中で、ゆらゆらゆれる小さな魚を指差す。心臓の高鳴りが聞こえるんじゃないかって、どきどきしながら

「ふうん、雷魚ならすぐ食っちゃうな」
「雷魚って」
「でかい、ドジョウみたいな魚」
「ふうん、ちょっと興味ある」
「だろ?」

ライの目が
いたずらっぽくアタシを見つめる
濡れてる、ライの目

エロス

…って、こういうことをいうの?

そのとき、
長いライの指がアタシの首筋に触れた―




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