ツイてない女子は王子に求婚される!!
「えっ?えっ?」

混乱する菜乃花は、夢ではないかと頰をつねってみる。ジンジンと痛みが走った。

とりあえず菜乃花は立ち上がる。柔らかな草の感触も、風の音も、夢ではなさそうだ。菜乃花がここがどこなのか歩き出そうとした刹那、誰かに背後から腕を掴まれる。

「きゃあ!!」

「黙れ」

悲鳴を上げた菜乃花だったが、首すじに冷たいものを当てられる。強い力と低い声に、菜乃花は自分を捕らえたのは男性だと分かった。

「今から俺の質問に答えろ。嘘をついていたら、容赦なくお前の首を斬る」

「は、はい……」

男性の声のトーンから、本気だと菜乃花は察した。殺されるかもしれないということに体が震える。

「お前は何者だ?」

「わ、私は……南菜乃花というものです」

「菜乃花?変わった名前だな」

「日本ではもっと珍しい名前があると思います」

「日本?なんだそれ」

「えっ……」

男性が腕を放したため、菜乃花はくるりと後ろを振り返る。そこには、日本人ではなく西洋の貴族のような見た目の人がいた。明るめの少し長めの髪を一つに束ね、豪華な刺繍の施された衣装を着ている。
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