箱入り娘ですが、契約恋愛はじめました【最終番外編】
「あなたに心配されなくても私はひとりでやっていけます。あなたが結婚することで肩の荷が下りたって感じよ。いろははいろはで、あとは好きにやってちょうだい」
「お母さん」

母は溢れた涙を拭いもせず、笑顔になった。

「でも、……ちょっと寂しいわね」
「お母さん!」

私は立ち上がり、母の胸に飛び込んだ。私もまた涙が止まらなくなっていた。
母の想ういい子ではいられなかった私。だけど絶対に幸せになるから。あなたの娘である以上、絶対にお母さんを不幸せにはしないから。

「一くんと協力して、安心できる家庭を作るのよ」
「うん」
「喧嘩してここに戻ってくるなんて許さないから」
「うん」

私も母も涙が止まらなかった。
明日の式で、母はきっと涙を見せたくないと思う。だから、私は今伝えたかった。
母をいつまでも愛していること。離れても家族であること。
今日まで26年間、幸せだったこと。

「お母さん、リビングにお布団並べて一緒に寝ようよ」

私が涙をぬぐってそう提案すると、母は涙でくしゃくしゃになった顔で答えた。

「いやよ、冷えるし、腰痛くなっちゃいそうだもの」
「えー?そんなこと言わないでよ~」

私はもう一度母に抱きついた。


***

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