With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
「星!」


「副キャプテン!」


強烈な打球を受けて、そのまま倒れ込んでしまった星さんに、キャプテン以下の内野陣が慌てて駆け寄る。


「大丈夫か?」


キャプテンの声に、しかし星さんは苦悶の表情を浮かべている。


「担架をお願いします。」


キャプテンの要請に頷いた主審が、合図を送り、球場職員がマウンドに急ぐ。担架に乗せられた星さんはそのまま、球場医務室に直行。


「木本。」


「はい。」


監督の声で私は山上部長と一緒に、担架に付き添う。


「白鳥、準備しろ。」


「は、はい。」


後ろから緊迫した監督の声と白鳥くんの慌てたような声が聞こえて来て、私の中の緊張も嫌でも高まって来る。


医務室に運び込まれた星さんを、スタジアムドクタ-が触診するが


「折れてるかもしれん。とにかくすぐに病院に。」


すぐに私たちに告げる。


「わかりました、すみません、救急車の手配を願います。木本、ベンチに戻って監督に報告しろ。星は続投不可能、これから俺が付き添って、病院に向かうと。」


「はい。」


山上先生の指示で、慌てて医務室を飛び出した私は


(まさかこんなことが・・・。)


焦りが募ったまま、ベンチに駆け込むと監督に事態を報告する。それを黙って聞いていた監督は


「佐藤、伝令だ。ピッチャ-星に代わって白鳥。」


と厳しい声で命じる。


(白鳥くん・・・。)


星さんのことはもちろん心配だけど、こんな緊急事態に公式戦初登板を迎えることになった白鳥くんの心中を思うと、私は胸をつかれる。


「明協高校、選手の交代をお知らせします。ピッチャ-星くんに代わりまして白鳥くん。」


だけど、私のそんな思いに関係なく、場内アナウンスが流れた途端、徹フリ-クからの大歓声が球場に響き渡る。


「白鳥の気も知らないで、女どもが勝手に盛り上がりやがって・・・。」


思わず悪態をつく佐藤くんの言葉に、私は同意してしまう。だって


「白鳥、頼んだぞ。」


というマウンドで迎えたキャプテンの言葉に頷いた白鳥くんの表情が、さすがに顔面蒼白なのが、ベンチからでもはっきりわかる。


規定の投球練習を開始した白鳥くんだけど、コントロ-ルがままならない。こんな白鳥くんは見たことがない。


「意外とビビりだな、アイツ。」


一塁ベース上で、小林雅則がせせら笑っていたけど、それは酷だよ。
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