With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
明協高校がベスト8進出を決めた翌日は1学期の終業式に当たっていた、私はいつものように久保くんと登校し、校門を潜って、入口から下駄箱を経由して、私たちのクラス1-Cの教室に向かっていたが、様子がこれまでと違うことに気付かされる。


「なにがあったの?」


私は思わず、横の久保くんに問い掛ける。私たちの視界に入ったのは、1-Cの教室の外にたむろする大勢の女子生徒の姿。同じような光景は、白鳥くんのいる1-Aの教室では見るけど・・・。


「そりゃ、そうなるよなぁ。」


私の問いかけに、久保くんはさもありなんという表情で言う。


「たぶん教室の中は、もっと凄いことになってるんじゃないかな?」


「えっ?」


「さ、行きますか。」


戸惑いを隠せない私にそう言ってニコリと笑うと、久保くんは


「ちょっとごめんね、通してもらうよ。」


と言いながら、女子の波をかき分けて教室に。その後ろから従うように進んだ私の目に飛び込んで来たのは・・・


「ほらね。」


「えっ、なに・・・?」


そこには、何人もの女子に取り囲まれて、戸惑いの表情を隠せないで立ち尽くす松本くんの姿が。


「みどり~、おはよう!」


その様子を固まりながら見つめる私に、美怜が近寄って来る。


「おはよう美怜。これは・・・。」


「凄いね、松本くん!彼があんな凄い選手だなんて、気が付かなかったなぁ。」


戸惑いながら挨拶を返した私に、美怜が興奮気味に話して来るから、私は唖然とする。


「よく見れば、かっこいいし、イケメンだし、お兄さんも凄い選手なんでしょ?やっぱり血は争えないよね!」


「美怜・・・。」


「私、断然ファンになっちゃった。みどり、私、彼とお話ししたい。改めて紹介してよ。」


「紹介って・・・クラスメイトなんだから、普通に話し掛ければじゃん。」


「この状況を見て、よくそんなこと言えるね。ライバル多数、こういう時はコネクションを利用しなくちゃ。だからよろしくね。」


屈託のない表情で言うと、美怜は離れて行く。結局この狂騒は


「おい、SHR始めるぞ。全員早く席に着け。」


という担任の声が聞こえるまで、収まることはなかった。


SHRが始まると、私はフッと松本くんの方を見た。すると彼も困惑の表情を浮かべて、何か訴えるようにこちらを見ていたけど、私はフイッと彼の視線を外すと、前の担任に視線を戻した。
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