With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
その後も、グラウンドでは、大宮くんが、縦横無尽に駆け回り、その俊足ぶりは監督や先輩達の注目を浴びていた。


でも、私は知らん顔で、自分の仕事を進める。とにかく、彼が気に食わなかったから。それにマネージャーは忙しいんだから!


それでも、ノックの補助の時間になって、監督の横に立っていると、大宮くんのスピードは際立っている。監督が打った、かなり難しいと見える打球にも悠々と追いついている。


目が合うたびに、ウインクして来たり、なにかとちょっかいを出して来るのが、ホントにムカつくんだけど、いい選手かも、とは思わざるを得ない。


サードの松本くんは、大宮くんとは対照的に、黙々とプレーするタイプ。派手さはないけど、堅実に打球を処理する。


久保くんは、一般男子としては、十分背が高い部類に入ると思うんだけど、野球選手としては小柄。一般的に背の高いプレーヤーのポジションとされるファーストでは、ハンデだし、一緒にノックを受けてる人数も多い。競争が大変そう。


ノックが終わると、ちょっと憂鬱だけど、ブルペンに。相変わらずのギャラリーの中、白鳥くんは快速球を投げ込んでいる。


「ナイスボールだ。」


村井さんが、そう言いながら、ボールを返す。


「参るよなぁ、どうしても煽られる。」


横で星副キャプテンが苦笑い。白鳥くんのスピードに、同じピッチャーとして、つい対抗心が出てしまうということらしい。


「気にするな、ピッチャーとしてのタイプが違うんだ。エースが入学間もない1年に煽られて、調子崩したら、どうするんだ?」


「はいはい。わかりました、キャプテン。」


西キャプテンにたしなめられて、星さんは気を取り直す。


「お疲れ様。」


1回、練習を中断した白鳥くんに近付いて、タオルを渡すと、途端に周囲の空気が厳しくなる。別に白鳥くんにだけ、そうしてるわけじゃないのに・・・。


「サンキュー。大宮、だいぶ目立ってるみたいだね。」


白鳥くんも、あえてもう普通に接してくれる。


「えっ、大宮くんのこと知ってるの?」


「うん。足の速さに掛けては、それなりに有名な選手だから、アイツ。あと女癖の悪さ。木本さん、気をつけなよ。」


やっぱり・・・。
< 34 / 200 >

この作品をシェア

pagetop