メーティスの猛毒
透がそう言うと、玲奈は「毒娘って知ってるか?」と言い文献を透たちに渡した。

それは、インドのマウリア朝時代に遡るとされる逸話だ。毒娘とは、生まれながら暗殺者として育成される少女である。赤ん坊の頃から少しずつ薄めた毒を与え、毒に対して完全な耐性を持った子を育成する。その子が美しい娘に成長した頃には、彼女の体液は恐ろしい猛毒と化しており、それに少しでも触れた人間は死んでしまうのだ。

「香奈さんの場合、幼い頃からチョウセンアサガオの毒に触れ続けていた。だから、彼女の体液ーーー涙や唾液に触れた動物は死んだの」

ゾクッと透の体に寒気が走る。村田刑事と美咲も顔を真っ青にしていた。そして、「治す方法はないのか?」と村田刑事が訊ねる。

「本当に毒を持っているのか、きちんと香奈さんを検査しないといけない。そして、もしも毒を持っているなら隔離して解毒剤を使っていくしかない」

香奈さんは、恐ろしい猛毒を体に宿して生きている。言わば、触れた人全てを殺せる暗殺者なのだ。透の緊張は増す。
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