メーティスの猛毒
「うるせえ!!死ねや!!」

村田刑事の言葉を無視し、男性はステージへと走っていく。悲鳴があちこちから聞こえ、香奈はステージで立ち尽くしていた。

「やめろ!!あんたが死ぬぞ!!」

透の隣に座っていた玲奈が立ち上がり、叫ぶ。しかし、男性は足がすくんでいるのか逃げられない香奈を包丁で刺した。

まるで、時間が止まったような気がした。香奈の目が見開かれ、体が崩れ落ちる。辺りには真っ赤な鮮血が飛び散り、男性にも返り血がついていた。

「……ッ」

香奈を刺した犯人を取り押さえようと村田刑事が動こうとする。それを玲奈と美咲が手で制した。透はステージへと近づく。

「香奈さん……」

ステージに横たわる香奈の左胸からは大量に血が出ている。おそらく、包丁は心臓を貫いている。もう手遅れだ。その目に光は宿っていない。

「うう……」

どれほど時が止まっていたのか、男性の声でみんなが動き出す。透が横を見れば、男性が苦しんで倒れている。
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