メーティスの猛毒
そう呟く玲奈の目線の先には、今度は庭が映っていた。野菜がたくさん植えられている。

「野菜を育てるのが好きなんですか?」

透が訊ねると「はい」と香奈は言い、庭を見せてくれた。立派な野菜がたくさん育っている。野菜はスーパーで買わなくていいだろう。

「特にこのナスは、幼い頃から家で育てたものしか食べたことがありません」

香奈が指差したナスは、接ぎ木がされていた。これは、二個以上の植物体を人為的に作った切断面で接着して、一つの個体とすることである。これにより、病害虫や環境に強い実ができたりする。

「なるほど、接ぎ木……」

玲奈はそのナスをじっくり見ていた。なぜそこまで見つめているのか、透には理解できない。なので香奈に質問をする。

香奈は、よく公園などの動物にパンを上げたりしているらしい。しかし、最近は仲良くなった動物たちが次々と死ぬ事件が起きているそうだ。

「どうして仲良くなった子たちが死んじゃうんだろう。あの人もそうだった……」
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