リボン~もう1度君に、プロポーズ~
仕事ができて、教え方がとてもわかりやすくて、かっこよくて、謙虚な人だと思っていた。

でも目の前にいる周晴さんは、私がよく知っている彼の姿じゃなかった。

恋を知らない初な男の子だった。

今まで知らなかった彼の意外な一面に、私の心臓がドキッ…と鳴った。

それと同時に、私は自分の気持ちに気づいた。

――私、乙國さんが好きだ。

ただの憧れだったはずのこの気持ちが“恋”に変わった瞬間だった。

「本当にごめん、早く戻ろうか?」

そう言った周晴さんの手を今度は私がつかんだ。

「…田渕さん?」

「――私も…」

「えっ?」

「私も、乙國さんのことをもっと知りたいです…」

そう言った私に、周晴さんは驚いたと言うように奥二重の目を大きく見開いた。
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