桜が散ったら、君に99回目のキスを。
「もういいの?」


彼はスクールバッグを背負い直しながらそう問うた。


「あ……はい。多分もう大丈夫です」


彼はちらりと私を見る。


不思議に思って首をかしげると、彼はその制服、と顎で私を指した。


「白峰女子なら走らなくてもまだ間に合うと思うよ」


「あ……」


忘れてた。


思わぬハプニングで時間の感覚が狂っていたけど、高校まではあと3駅。


雨だから家を早めに出たのが功を奏したみたいだ。


彼の西高もこの駅から歩いて数分の所にある。


巻き込んでしまっては心苦しいけど、その心配はなさそうだった。


「本当にありがとうございます」


そう言ってもう一度頭を下げると、彼は軽く手を振って応えた。


「それじゃあ。気をつけて」


彼はワイヤレスのイヤホンをカバンの外ポケットから取り出し歩き出す。


その背中に私は思わず声をかけた。
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