堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
おしゃべりしながらふたりでリビングに向かい、家族三人そろったところで、改めてウィーンでの出来事を話した。
といっても、志門さんの話はもちろんできないから、仮面舞踏会のことには触れず、ひとりで街並みや食事、ケーキを楽しんだということにした。
「話を聞いてるだけでも素敵ねえ……。やっぱり行かせてあげてよかった」
うっとりしながら母が言うと、兄がすかさず口をはさむ。
「まぁ、あまり治安が悪くない国だからよかったけど……それでも日本人観光客は置き引きに狙われたりするんだ。今度海外に行くときは、ひとり旅っていうのはやめてくれよ?」
私は苦笑してうなずいた。こんなふうに対照的な反応を見せる母と兄だが、ふたりの意見の根っこにあるのは、私たち家族にとって忘れられない、過去の交通事故。
ずっと人生を共にしていくはずだった父を突然失った母は、〝命あるうちに、好きなことをして人生楽しむ〟という考えがモットーになり、だから私のひとり旅にも賛成してくれた。
それに対して兄は成長するに従い、〝自分が父親代わりになって、母と妹を守っていく〟そんな強い使命感を持つようになったため、旅行には反対だったのだ。