愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
仕事初めの日、私は陽菜さんと打ち合わせて、晴れ着で出勤してみた。


昨年は、全般的に売り上げが不振で、社の雰囲気は重いことが多かったけど、この秋冬物は、寒さが厳しいこともあって、少し持ち直していた。デザインはもちろん大切だけど、気候、気温に大きく影響を受けるのが、私達の業界だ。


この勢いで、今年は反転攻勢。景気づけではないけど、まずはパッと華やかに、新年を迎えよう。陽菜さんの提案に、私は2つ返事で賛成した。


私達が揃って、オフィスに出勤すると、既に出勤していたスタッフ達から、歓声が。


「きれいだね。」


「いやぁ、やっぱり日本女性は晴れ着だよなぁ。」


なんて声に交じって


「由夏、ズルい。なんで、私にも声掛けてくれなかったの?」


と美優が拗ねている。


「ゴメン。年明けてから、陽菜さんに連絡いただいて、急遽決まったんだよ。」


「えっ、じゃ由夏、自分で着付けたの?」


「私は出来ないから、お母さんが着付けてくれた。でも陽菜さんは自分で着付けたんだって。」


「えっ、本当ですか?私も和服の着付け、出来るようになりたいんです。陽菜さん、今度教えて下さいよ。」


「いいよ。じゃ、今度うちにおいで。」


「ありがとうございます、是非伺います。」


なんて陽菜さんと美優が笑顔て話している。


普段は平賀さんに何もかも任せ切りで、滅多にこちらに顔を出さない所長と副所長も、さすがにこの日は、出勤でおじさん二人も喜んでくれてる。


「丸山、岩武。気を遣わせて悪かったな。大変だったろ?出勤。」


「いえ、今日は仕事初めだから、いつも程、電車も混んでなかったし。」


「そうか。とにかくありがとうな。お陰で、なんかいい年になりそうだよ。」


「そう思って貰えたならよかったです。」


このところ、なんとなくギクシャクすることが多かった平賀さんと陽菜さんが笑顔で話している。とりあえず、よかったな。


「さぁ、今年1年もよろしくな!」


「はい!」


その後の朝礼で、平賀さんがそうみんなに声を掛けて、新しい年がスタートした。


ちなみに晴れ着姿は、聡志にも写メして、喜んでもらった。よかった。
< 141 / 330 >

この作品をシェア

pagetop