愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
そして当日、昼過ぎに仙台に着くと、練習を軽めに切り上げて、聡志が迎えに来てくれていた。


「由夏。」


「あっ、聡志。」


私が笑顔で近づくと、聡志はサッと私の荷物を持ってくれる。


「ありがとう。」


「紳士の嗜みだよ。」


「それは、それは。練習早めに切り上げさせてごめんね。」


「大丈夫だよ。そのつもりで、昨日までみっちりトレーニング積んどいたから。3連休の最終日、泊まらないで、こっちに戻って来たのは、その為なんだから。」


「さすがだね。」


「去年の二の舞はしたくねぇし、でも今はまだ自主トレ期間なんだから、お前が来てくれた時くらいは、お前と過ごしたいからな。」


「うん。」


そんな会話を交わしながら、私達は歩き出した。


聡志の新居のマンションは、仙台駅とEの練習グラウンドのちょうど中間、ややグラウンド寄りといったところ。


周辺は閑静な住宅街で、その中にタワーマンションというには、ちょっと大袈裟だけど、高層マンションが立っている。


オートロック式で、仙台では一応有名人の聡志としては、セキュリティも安心。東京圏の感覚では、10万円代後半はしそうな家賃も、実際には10万を切ってるらしい。


私が驚いていると


「東京圏は、物価が高過ぎる。離れてみると、痛感するよ。一極集中の弊害だな。」


と社会派のコメント。


部屋に入ると、確かに雑然とはしてるけど、まぁ想定の範囲内。2DKの間取りは一人暮らしには、少し贅沢かもしれないけど、私が泊まったり、将来一緒に住むことになった時のことを考えてくれたのだろう。


「眺めがいいね。」


「夜は、仙台の街が綺麗だぜ。」


「そっか、楽しみだな。」


寒い中、バルコニーに出てみて、そんな会話を交わしてから


「じゃ、片付けに入りますか。」


と張り切ってみると


「まだいいよ。少しゆっくりしてからで。」


と聡志が言ってくれる。けど


「ううん、ゆっくりするなら、片付けが終わってからの方がいいから。」


と答えると、私は部屋の中に入った。
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