愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
そして、キャンプが始まり、春の新作が店頭に並んだ。


私は、ドキドキしながら、Eのニュースをチェックし、春物の動向を追い続けた。


聡志が全国的に、ニュースになることは、残念ながら、ほぼ無くなったけど、Eの公式ホームページのキャンプ便りや、ローカルニュースで、取り上げられることは少なくなかった。


新年明けての自主トレの初日、グラウンドに一番乗りだったこともあったんだろうけど、聡志のインタビューが、地元スポーツ紙に掲載された。


私はその記事をネットで目の当たりにした時、聡志に対する地元の注目度は、決して低くなっていないことに、改めて驚いた。


「二刀流」に対する注目度と言って間違いない。そして聡志自身も、それに拘りを持っている。その聡志の思いは尊いし、応援したいと思っていた。だけど


「アイツは、例え本心でどう思ってても、二刀流を続けるしか選択肢がないんだ。」


と話してくれた人がいる。白鳥先輩だ。


みんなで、浅草に初詣に行った翌週。私は悠の家を訪ねた。会ったばっかりで、身重の悠に負担を掛けるのは、申し訳なかったんだけど、どうしても気になることがあった。


天麩羅屋で、今年の抱負の話題になった時、聡志は沖田くんから二刀流が負担になってるんじゃないかと尋ねられ、そんなことはないと言い切った。


しかし、その聡志の言葉に、一瞬なんとも言えない表情を先輩が見せたのが目に入った。気のせいかな、とも思ったけど、どうしても気になった私は、悠にお願いして、先輩に時間をとってもらったのだ。


「この話は、E担当の先輩記者から聞いたんだが、俺もずっと気になってたんだ。二刀流はツカを確かに、プロに導いた。だが、2年間、離れた所で見ていて、ツカは結局、その二刀流で、プロ野球選手として遠回りをさせられてるんじゃないかって。」


舞ちゃんのご機嫌な声と、彼女をあやしている悠の声が聞こえる中、先輩は話し始めた。


「3年前のドラフトで、ツカは3位という上位でEに指名された。だが、実はそもそもEの指名候補リストの中に、ツカの名前はなかったらしいんだ。」


「えっ?」


そうだったの?あっ、そう言えば・・・。


「Eから事前に挨拶はなかったって、確かに聡志は言ってました。」


思い出して、そう言った私に、白鳥さんは頷く。
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