愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
ドラ1選手が確定し、テレビ中継はここで終了。会議はいったん夕食休憩に入る。


実は、この時点では、私の緊張感はまだそれほどではなかった。私の彼氏は、残念ながら、ドラ1候補に数えられるようなレベルの選手じゃないから。


テーブルに広げられた宅配ピザやサラダ、それにお菓子をつまみながら、私達は今決まったドラ1選手達の話題に花を咲かす。


私達3人を結び付けたものの1つに野球があるのは、間違いない。特に私と悠は「野球女子」と言って、差し支えないくらいに野球に詳しい。


彼らの多くは知ってる選手だったし、まして今年の大学4年生は私達と同世代で、聡志が戦ったり、一緒にやったりしたメンバーもいて、思い入れも深い。


そんな私達の会話を加奈も興味深げに聞いている。そんな時間を過ごしているうちに、会議が再開される。


世間の関心は、やっぱりドラ1選手に集中し、地上波の中継もそこで終了してしまうのだが、会議はまだまだこれから。私達は中継が続くCS放送に切り替えて、また画面を見つめる。


ドラフト2巡目以降は、なぜか1巡目とは異なり、ウェイバー順と呼ばれる、その年の成績が下位のチームから順番に指名を行う形式に変わる。


各球団が指名出来る選手の数は10名まで。もっともそこまで指名する球団はほとんどなく、大方は5〜6名程度で指名を終える。


つまり、1年でプロ野球の門を叩けるのは、だいたい80名前後。決して広い門ではない。当たり前だが、本人が希望しても、その門をくぐることが許されない選手の方が多いのである。


ちなみに、高校、大学からプロに進みたい選手は「プロ志望届」というものを提出しなくてはならない。これを出さなかった時点で、ドラフトの対象から外れる。


ドラフト候補生となった選手に対して、今度はプロ球団から、挨拶というか接触がある。


「君を獲得したいという意思がある。」


という、いわばプロポーズのようなもの。ただプロポーズと違うのは、プロポーズしてくる相手が、複数である場合が多いのと、告白して来たくせに反故にされるケースも少なくないこと。


更には、プロポーズされた側から否応言う余地が全く、ただ待つしかないことだ。
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