愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
ところがその後、ネットニュースを見て、ブッたまげた。なんと新監督が、明後日視察にやって来ると言うのだ。


俺達二軍とは別グラウンドで、一軍も秋季キャンプを行っているので、その視察が主目的なのだが、俺達の試合にも足を伸ばす予定なのだそうだ。


(これはチャンスだ。)


ここでビビってるようじゃ、プロ野球選手失格。新監督に名前と顔を覚えてもらうには、絶好のチャンス。


「いきなり御前試合か、ついてるじゃないか。ま、思い切って行けや。」


次の日、小谷さんはこんなことを言って来たが、新監督の来訪を知っていた監督代行が、俺を抜擢してくれたのは明らかだった。


『明日、新監督の前で投げることになった。』


『凄いじゃん、とにかくしっかりやんなよ。何事も最初が肝心って言うからさ。』


『おうよ、任せとけ。』


『私もネットで経過見ながら、応援してるから。』


『バカ。仕事中だろ、真面目にやれ。』


『ハ〜イ。』


夜には、あいつとそんなLINEを交わして、気分はいよいよ高まる。


そして、当日。一軍の視察が長引いて、新監督はまだ到着していなかったが、俺の気合はMAX。


(さぁ由夏、行くぜ!)


いつものお約束の言葉を、遠い東京に送ると、俺は大きく振りかぶった。


次の瞬間、我ながら惚れ惚れするような快速球が、キャッチャーミットに納まる。


「ストライク!」


審判のコールが心地よい。


「いいぞ、ナイスボールだ。」


ベンチでは、小谷さんが手を叩いている。


(イケるぜ。さぁおっさん、早く見に来いや。)


俺は自信満々にまた、振りかぶった。
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