メーティスの瞳
「……何も知らないのか。愚かすぎる」

ボソリと呟いたその言葉に、透の中に苛立ちが生まれる。偉そうに言う玲奈はやはり恋愛対象外だ。不貞腐れた透はそのままソファに乱暴に座る。玲奈は何もないような涼しげな顔で、それがさらに苛立った。

「あ、そういえば宍戸さん!」

重苦しい空気を変えるように、慌てて洋一が玲奈に声をかける。

「実は、俺の妹が寄生虫に興味があるらしくて……。今度でいいので、お話を聞かせてあげてほしいんですが……」

「寄生虫に!?」

透と珍しく玲奈が大声を上げる。透は驚きの、玲奈は喜びの声を上げていた。

「いやいや、やめとけよ……」

透はそう呟くが、どうやら洋一の妹は玲奈から本当に話を聞きたいらしい。玲奈の顔が珍しく表情でいっぱいになる。

「では、今度の日曜日に伺います」

玲奈はそう洋一に言い、嬉しそうな顔で仕事に戻る。その後ろ姿を、透は「マジか……」と言いながら見つめていた。
< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop