僕の匂いが好きらしい
「…僕の匂いをもう少しだけ嗅いだら?」
世界一下手くそな誘い文句だと思う。
でも、今の僕にはそれしか思い浮かばなかった。
彼女を泣かせたまま、みんなのいる教室に返したくない。
…他の奴らに見せたくない。
彼女は
「なにそれ」
僕の腕の中でクスクスと笑っていた。
「…ありがと」
という彼女の顔は見えなかったが、
僕をぎゅっと掴んで離さなかった。
体育の試合で負けただけで、こんなにも泣くだろうか?
僕の匂いを嗅ぎに来るくらいの彼女だ。
そんなことで泣いたりしないだろう。
僕が彼女の"彼氏"だったら
本当の理由を話してくれるだろうか?
彼女と関わるのも、
こうして慰めようとするのも、
"匂い"に頼るしかない僕は、
なんて情けないのだろう。
君の好きな"人"になれたら…と願う僕だった。
【END】

