猫になんてなれないけれど
「じゃあ先生~、お世話様でございました~」

「はい、お大事にしてくださいねー」

「お大事に」

本日受付最後の患者さんが、診察室を後にした。

深呼吸をして、左腕にはめた時計を見ると、18:30の文字が表示されている。

先生の手際もよかったおかげで、患者さんの診察は予想よりも早く終わった。

あとは・・・と、処置室に移って物品の片付けを始めると、ほどなくして「おつかれー」と伸びをしながら隣の診察室から相澤先生がやってきた。

「今日は忙しかったなあ。疲れただろう、真木野」

「いえ、大丈夫です。先生もお疲れ様でした。とりあえず、早く片付けちゃいますね」

動きを止めずに返事する。今はとにかく、1分1秒でも時間が大事な状況だから。

テキパキ、と、動いていると、先生のじーっと観察するような目線を感じて気になった。

「・・・なんですか」

聞かずにはいられない雰囲気だった。視線を返して尋ねると、先生は、私の顔をまじまじ見つめて呟いた。

「いや、なんか、仕事中も思ってたけど。真木野、今日はいつもと雰囲気違くない?」

「!」

ドキッとした。

これから、冨士原さんと食事に行くってバレている?って思ったからだ。

「・・・そ、そうですか?別に、何も変わらないと思いますけど」

仕事中ににやついたりはしてないし、メイクもいつもと変わりなく・・・というか汗で絶対落ちていて、髪も今は、後ろで一つに結んでいるだけ。

バレる要素はなにもない・・・と思うのだけど。
< 105 / 169 >

この作品をシェア

pagetop