猫になんてなれないけれど
「どうでしょう・・・。話し合って、どうしてもっていうなら猫だけでも・・・、いや、でも、そうですね・・・犬のかわいさを知らないだけかもしれないので、なんとか・・・犬の良さを伝えます。それで、犬と猫を一匹ずつ飼うのがお互いにとって一番良くて、丸く収まるかもしれないですね」

考えて、私なりの最善策を伝えたけれど、冨士原さんは納得できないようだった。

「それで丸く収まるとは思えませんね。私なら、その提案は却下します」

「ええっ!?」


(なんで!!)


「犬がかわいくないとは言いません。ですが、私は同意しませんね。飼うなら絶対猫だけです」

「な、なんでですか!!飼ったら絶対かわいいですよ!!」

「それでも、猫に勝るとは思えません」


(な、なんですって~!?)


「かわいいですよ、犬!!」

「かわいくても、毎日散歩とか大変でしょう」

「それが楽しいんじゃないですか!健康的ですよ!!カフェだって一緒に行ったりできるんですから!!」

お酒の力も手伝って、思いっきりムキになって意見する。

だって絶対、犬のかわいさわかってないし!!

最後の台詞で、どうだ!!と勝ち誇った私だけれど、冨士原さんは、そんな私を冷ややかな視線で見つめた。

「わざわざ連れて行かなくても。猫なら、カフェに行けばそこにいるので会えますよ」

「・・・・・・猫カフェのことですか」

「はい。猫は環境が変わるのが苦手ですから。その場で待っていてもらえばいい」

「い、いや、そういうんじゃなくて・・・」


(お店にいる子の話じゃなくて、飼い犬と飼い猫の話をしてるんだけど・・・)


冨士原さん、やっぱり酔っているのかも。

顔色に変化がないからちょっとわかりにくいけど、眼鏡越しの目が完全に据わっている感じ。

冨士原さんは、その目で私をじっと見つめて、決意したような顔で言う。

「・・・わかりました」
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