猫になんてなれないけれど
(そうなんだ・・・)


「だから、警察でも情報セキュリティとか・・・ネット関係の部署にいるんですね」

「まあ、そうですね。けど、ドラマみたいな大それた部署ではなくて・・・私がいるのは、生活安全部にある一部署ですが」


(そっか・・・。ずっと『警察官』って目で見てたから、サラリーマン時代の冨士原さんが上手く想像できないな)


けど、変わらないのかな。今もネットに関わる部署にいるなら、無表情で、パソコンとにらめっこして。

マンションの所有者の先輩は、今は警備会社に転職をして、海外に転勤中ということだった。

その間、部屋の管理を任されているそうなので、その先輩が帰ってくるまでは、引っ越しも勝手にはできないそうだ。

「そうなんですね。じゃあやっぱり、猫カフェに会いに行かないといけないですね」

「はい」

冨士原さんの家。どんなお家なんだろう。管理を任されていなくても、ものすごく綺麗に整頓されているような気がする・・・。

「真木野さんも、今は飼っていないんでしたね」

「はい。私はやっぱり、犬を飼うならラブラドールがいいんです。けどそうすると、一人暮らしのマンションじゃさすがにちょっと無理かなと」

「ああ・・・でかいですもんね」

少しだけ笑った横顔。今日の冨士原さんは、纏う空気が柔らかい。

そして私は、冨士原さんの笑顔を見るたび、なぜか頬が熱くなる。


(まさか・・・ほんとに好きになっている?いや・・・違うよね。いいな、とは確かにちょっとは思ったけど、私の好みのタイプじゃないし・・・)


好きって認めたくないだけなのか、それとも本当に、ただ、人間的に好意を抱いただけなのか。

そこはわからないけれど、感じている頬の熱さは、なかなか冷めてはくれなかった。







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