同じ空の下~想い描いた2人の夢~
そんな私を見かねて、学校にバスが着いた後、私は主将に呼ばれた。

ホントなら、春馬先輩が私に帰ろうと声をかけてくれるはずだったが、この時ばかりは春馬先輩は何も言わずに

「またな!しっかり休んで!」と言い残して帰っていった。

私はグラウンドの隅のベンチに腰をおろした。その横に主将は座って。

私の気持ちなんて、きっと丸わかりなんだろうな。

「…樹…」と主将は優しく私に声をかけた。

「…さっきは八つ当たりみたいな言い方してすいません」と私は謝る。

「謝るな。お前の気持ち、理解してるつもりだ。あくまで助っ人として、俺らを引っ張ってくれた。それは感謝してる。けど、俺はこの大会で野球を引退するアイツに最後の想い出を作らせてやりたい」と主将は言う。

「はい。わかってます。けど、なぜか、胸が少し痛むんです」と私。

「…複雑なんだろう?嬉しいはずなのに…マウンドに上がらないことが。悔しさでもあるんだろうな。樹だって一緒に甲子園目指して練習してきたんだから。けどな、俺としては甲子園でウチの武器として、3盾春馬、樹、乃木に思い切り暴れて貰いたいと思ってる。そのために、あえて、温存したいと思って、明日は外れて欲しいと言ったんだ。もちろん、ベンチに入れるつもりだったし、代打か何かで使うつもりだったのに…まさか、ユニフォーム脱いで明日はマネージャーとして見守ると言うのは俺は正直想定外だったよ」と主将は言った。

「…甲子園決まれば、エースとして、春馬先輩にユニフォーム返すつもりでしたし、それが少し早まっただけですよね!」と私は笑顔を作った

主将は多分気づいてる…私の作り笑顔に。

それでも気づかないフリして、

「そうだよ!お前のユニフォームはもう準備出来てるんだから!」と主将は笑った。

そして、「心配すんな!明日は絶対勝って甲子園決めるぞ!」と続けて私の肩にトンと手を乗せた。

私は相手チームを羨ましいとさえ思ったという話を素直にしてみた。

けど、よく考えると、チームのことを1番に考え、皆とこうして1人1人と向き合ってくれる主将の凄さ、優しさ…それがカッコいい。主将としてチームを見て、仲間を見る。そんな主将を私は尊敬している。

私はこの学校の野球部を選んで良かった。

最初はホントに春馬先輩を追ってきただけだった。けど、ここには確かな絆や、信頼感等、他には無いものがあった。

私は世界一の幸せ者かもしれない。

本気でそう思ったので主将にそう伝えてみた。

「…なんか照れるわ。けどありがとう。チームプレイだからさ、仲間との信頼と絆は大切にしていかないといけないと思ってさ、俺なりに、頑張ってきたことが評価されたみたいでスゴく嬉しい」と主将は言ってくれた。

なんか私も嬉しくなって笑ってしまった。

「…さてと、そろそろ帰ろっか。送るよ」と主将は言い、ベンチを立ち上がる。

「はい!ありがとうございます」と言って私も立ち上がった。

「…主将が引退したら大変ですね。次主将になる人はプレッシャーなるだろうね」と私が言うと

「気にしなくていいんじゃない?チームのことを思って自分らしくやってくれたら俺はいいよ?」と主将は言った。

そうですね!と私は笑った。

「それに、お前がいる。お前はマネージャーとして選手として皆を誰よりも見てる。だから、苦しいときは、お前が皆の支えになってやればいい」主将はそう言ってくれる。

私は、「はい!」としか返事出来なかった。

雑談しながら主将と家に帰った。

家について、中に入った私は、今日の話をお父さんとお母さんとお兄ちゃんにご飯を食べながら話していた。

珍しく、早く帰ってきていたお父さんはいつもニコニコしながら私の話を聞いてくれた。

毎日疲れてるはずなのに。

私が部屋に戻ると、お父さんが「少しいいか?」と入ってきた。

お父さんが私の部屋に入ってくるなんて珍しい。



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