同じ空の下~想い描いた2人の夢~
整列し、『ありがとうございました』と両者頭を下げた。悔し泣きしている人が多く、握手するのに少し抵抗した。

けど、主将は「肩ちゃんと治療しろよ?じゃないとホントにこれから投げられなくなるぞ?まだチャンスはあるんだろう?」と相手の投手に声をかけていた。

「…もしかして最初から気づいて…?」と言う相手に、

「当たり前だ。俺らもそれなりの経験値がある。それくらい、感じたよ。だから、全力で終わらさせて貰った」と主将は言った。

それを聞いた相手はさらに泣いてしまった。

そんな姿を見ると私の胸も痛む。

「俺さ、肩やってさ、試合長らく出れなくてさ、今日のラストイニングが俺の最初だったんだよ。ずっと俺の代わりに投げてくれたヤツがいるんだ。皆で甲子園行こうなって。だからさ、チャンスは大事にして欲しいんだ。じゃなきゃホントに投げれなくなるから」と春馬先輩は言った。

「…君らの悔しがった分は俺らがキッチリ背負って絶対甲子園行くからさ!だから来年は、万全の君と戦わせてくれ」と主将は言った。

自分等は来年引退していてもういないはずなのに…

主将はまだチャンスの残された2年の相手ピッチャーへの気遣いに私は少しうるっとした。

彼は大きく頷いて、ありがとうございますと頭を下げた。

そんな彼を優しく抱くメンバーたち。

私はこの光景を見て野球やっててよかったなって改めて思った。

チーム戦だからこそ、仲間との関係が大切にされている。そして、共に同じ経験を味わうことで強さや、絆が深められていく。

そんな相手に少し羨ましささえ感じた。

そして私たちは試合会場を後にした。

バスの中ー

「…樹…明日の決勝なんだが…」と言いにくそうに主将は言う。

何となくは理解していた。

私はあくまでも助っ人、エースが投げられるんだったら、エースの春馬先輩が投げる方がいい。

私は頷いた。「…はい…」と

「まだ何も言っとらんけど?」と言う主将に

「…言わなくても察します!そんな言いにくそうな顔されたら…。最後だから、思い切り、春馬先輩に投げてもらいたいんですよね?私明日はジャージでもいいってことですか?ユニフォームは脱ぎます」と私は言った。

皆が私を一斉に見た。

『…えっ?試合出ないの?』って顔で。

春馬先輩までも私の顔を見る。

「俺、そこまで言ってない!ベンチには入れ」と主将に言われて、

「私の出番は明日は無いでしょう?春馬先輩と乃木くんがいるんだから!」と私は強めに言ってしまった。

なんか、スッゴク嫌だ…八つ当たりみたいだ。こんなの…

私はうつむいた。それから私は学校に着くまで一言もしゃべらなかった。

嬉しいはずなのに…胸がすごく苦しい…

エースの春馬先輩が試合に出れる、しかも。先発として投げるって言うのに、なんで私、こんなにも苦しいんだろう…

私は泣きそうになった。

< 54 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop