王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


「やあ、久しぶりだな」

まさか幽霊か、と思ったその男は、ずいぶんと穏やかに笑った。

「ひどい顔だ。まあ無理もないが。ゆっくり説明するから座りなさい」

促されるまま、アイザックがバイロンの傍に近づく。ジョザイアが椅子を運んでくれ、兄に手の届く位置に座った。

「大丈夫かい、ザック。まるで死んだのが君の方に思える顔色だ」

くすくす笑いながら、ケネスが後ろに立つ。
ザックは一度息を吸い込んで、「本物ですか」と問いかけてみた。

「あいにく本物だな。とはいえ、第一王子バイロン・ボールドウィンは死んだ。ちゃんと葬儀を行い、埋葬されただろう? お前は軟禁されていて参列しなかったんだったか?」

「ええ。葬儀まで行われた兄上が、どうしてこんなところにいらっしゃるのですか」

「……話すと長くなるのだがな」

まあゆっくり話そう、とバイロンはベッドに横になった。半身とはいえ起き上がっているのは辛いらしい。

「あの日、ひと眠りして起きたとき口の中にべとつく何かがが入れられていた。伯父上は薬と言ったが、あれは毒の混ぜられたハチミツだったのではないかと思う」

バイロンは恐怖で絶叫した。侍女が気が付き、バイロンが倒れ苦しんでいる現状を見て慌てて人を呼びに行く。
口のべとつきが気持ち悪く、彼は咄嗟に手を口に突っ込み、胃の中のものをすべてを吐き出した。
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