王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

「アレンに安全なところまで逃がすように言ってあるが……」

「……戻ってくる馬がいますが、あれがアレンでは……?」

ザックの私的に、ナサニエルの顔色が変わる。

「アレン、カイラはどうした?」

「申し訳ありません。山道に入り、手綱を取ろうとした瞬間に、馬車の重みで傾いで……」

そのまま、馬車ごと傾斜を駆け下りていったとアレンは言った。
下りて探すにも、アレンひとりでは二次遭難になるだけだ、と応援を頼みに来たところだという。

「こいつらにかまっている場合ではないな。アイザック探しに行くぞ」

「もちろんです。ロザリーも一緒ですよね」

「陛下。こいつらはどうすればいいんです?」

ケネスが問いかける。盗賊を装った男たちは、ナサニエルやその護衛によって、縛られていた。

「記憶をなくすくらいぼこぼこにしておいてくれ。侯爵には私が死んだと思わせねばならないのだ。誰かひとり、金で言うことを聞きそうなやつをひとりだけ残しておいてくれ」

「はあ」

その返答に、「俺が報告に戻る」と縛られた男たちが次々に言う。
侯爵の人望の無さにケネスは少し呆れた。

「いくぞ、アイザック」

そのまま馬にまたがり行ってしまう父親を、ザックは慌てて追いかける。

「悪いがケネス……」

「了解了解。陛下のお望みどおりにしておくよ」

安請け合いをしてくれるケネスをありがたく感じながら、アイザックは父の後を追った。

< 142 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop