王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
コンラッドが庇うように侯爵とクロエの間に入る。

「伯父上、やめてください。……クロエ嬢。聡い君なら分かるだろう? 俺と一緒に国を作っていこう。今の国のありようが気に入らないなら、俺と一緒に変えていけばいいのだ。その権限が俺にはあるのだから」

コンラッドが必死になればなるほど、クロエには滑稽に思えた。
自分に力があると、本気で思っているのだろうか。だとすれば、この王子は全く周りが見えていない。

「私が気に入らないのはそこじゃありませんわ」

クロエは一歩前に出ると、紅茶のカップに手にかける。ふたりに見せつけるように、ゆっくりと持ち上げた。

「私が、かつてアイザック王子との婚約をお断わりした理由を、ご存知ですか?」

「……いや?」

コンラッドは心配そうに彼女の動きを見やる。

(仮に毒があっても、構わない。本気でコンラッドの妻になるくらいなら、死んだ方がマシだ)

「私は、私の子に、異国の血が入るのはごめんですの。今回は異国ではないかもしれませんが、……平民の血も、ご勘弁願いたいですわね」

「……なにを言っている?」

アンスバッハ侯爵が驚愕で目を見開き、コンラッドが震える声で問いかける。

なんだ、知らなかったのか。とクロエは思った。
マデリン様もなかなかやるものだ。

思い切りあでやかな笑みを浮かべてから、クロエは紅茶を一気に飲み干した。
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