王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


アンスバッハ侯爵は、動転していた。
自分の計画のどこに破綻があったのか、長い廊下を歩きながら考える。

全ては、傀儡の王を手に入れるためだ。ナサニエルをバイロンを、自らの操り人形としようとして失敗し、殺害した。そして最後の砦としてのコンラッドを王に立てる。
それで終わりのはずだった。なのに、コンラッドが王家の血を継ぐものではなかったと?

あまりに強く唇を噛みしめていたら、血の味が口の中に広がった。
右手で唇を拭い、気を落ち着けるために深呼吸をする。

例え現実がそうでも、コンラッドはナサニエルに認知された第三王子だ。バレさえしなければ問題はない。
ナサニエルはもういないのだ。クロエ嬢の口さえ塞げば、今更、出生を疑問視されることはないだろう。

だがもし、クロエがイートン伯爵にそれを伝えていたとしたら?
娘大事の伯爵のことだ。クロエを救出するためにこの情報をどうにでも利用するだろう。
改めて見てみれば、たしかにコンラッドには他のふたりの王子にはあった気質が欠けている。容姿もマデリンに偏って似ている。
一度疑問を植え付けられれば、人心の中でその疑問は勝手に育つだろう。あろうことかコンラッド自身がそれだけの肥やしを持っている。

胸の奥がちりちりと焼け付くように、侯爵の中で焦りに似たなにかが暴れている。

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