王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
ザックは頭を掻きながら、ちらりとコンラッドを見る。
コンラッドは、あれから、まるで人が変わったようにおとなしい。一緒に執務をするにあたり、バイロンもアイザックも容赦なく間違いを指摘するが、癇癪を起こすこともない。
この一連の騒ぎで、コンラッドが受けた処分は、王位継承権のはく奪とクロエとの婚約解消だ。
侯爵に比べ処分が軽いのは本人も意外だったようだが、それを決めたナサニエルの談は辛辣だった。

「お前は操られてしかいないのだろう。自分で判断できる器量はないだろうからな」

優しさというよりは見限られての判断だと知り、コンラッドにも思うところがあったのだろう。
それ以来、立場を奢るような発言はせず、勉学にも仕事にも真面目に取り組んでいる。

そして彼は時々、ちらりちらりとアイザックを窺うような態度を示した。
隠しているつもりがあるのか分からないくらいの強い視線にアイザックは辟易してきた。

「なんなんだ。コンラッド。なにか言いたいことがあるのならはっきり言え」

「いえ、別に」

「なにもないなら、こっちをチラチラ見るのはやめてくれないか」

コンラッドは口ごもると、「では……」とおずおずと語りだす。

「アイザック兄上は、クロエ嬢と結婚するのですか?」

それは予想もしていない問いかけで、アイザックは目を点にする。堪えられなくなったのか、ぶはっと吹き出したのがバイロンだ。
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