王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「お前は、自分の権力を誇るタイプの男ではないからな。助力を得るとか、協調するとか、悪く言えば人に心配させることに長けている。おまえを放っておけないという人間が周りに集まり、おまえは素直にそれに感謝するだろう。王というよりは共同体をつくるのに向いている性格なんだ。だからコンラッドも仲間に引き入れたほうがいいと思ったんだろう。だがな、コンラッド自身に反省の色が無ければ、父上だってそんなことはおっしゃらない。お前の態度も良かったんだよ」

「……それは、ありがとうございます」

コンラッドが殊勝に頭を下げ、ザックはバイロンのなかなか鋭い分析に頷く。
すると、バイロンは苦笑しながら続けた。

「アイザックも褒められているばかりではないのだぞ。お前は貴族への対応が下手だと父上は嘆いておられた。俺にそこをサポートするようにとおっしゃられていたぞ」

「ああ。反論できないですね。細かい交渉事は苦手です」

「ほらこれだ。コンラッドもこき使われるぞ。覚悟しておいた方がいい」

バイロンの口元が緩む。
コンラッドも自然とほほ笑んでいた。昔は、実兄ともこんな風に話すことはなかった。誰もがコンラッドを腫れもののように扱い、必要とされることなどなかったのだ。

クロエがの言葉が蘇る。
自分が何をしたいのか、何ができるのか――
いつになく、コンラッドはワクワクしていた。それは、全て私に任せておけと伯父に言われたあのときとは違う高揚感だった。
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