王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

ザックの知るクロエは、ケネス第一主義者だ。ザックを救うために、しおらしく好きでもない男と婚約するような娘ではない。
なによりもケネスに利が無ければ動かないだろう。

(俺に見切りをつけ、伯爵家を守るために第三王子に嫁ぐ気か? だが、それを伯爵が了承するとも思えないが)

「……クロエ嬢。この婚約、ケネスは知っているのか?」

クロエは目を伏せ、声を落として言う。

「いいえ。お兄様は今遊学中ですの。諸外国を見てくるといって」

「いないのか? クロエ嬢、ケネスにも言わずにこんな大事なことを決めていいのか」

「おっと、兄上。昔あなた方がどういう関係だったかは知りませんが、今の彼女は私の婚約者です。気やすく呼びかけないでいただきたい」

「コンラッド。お前……」

四歳下の弟の、こんな勝ち誇った顔は初めて見る。
同腹の王太子がいることもあって、コンラッドは昔から奔放だ。
本人も特に王位に固執してはいなかった。むしろ勉強嫌いで、兄が二人もいるのだから自分には必要ないというスタンスだったように思う。

「お前、クロエ嬢が好きだったのか?」

クロエとコンラッドは一歳差だ。王都の貴族の子は皆同じ学校に通うのだから、嫌でも面識はあるだろう。
アイザックは言動のきつさを苦手としているが、クロエは話さなければ気品ある美しい令嬢だ。
コンラッドが彼女に恋をしたとしても不思議はないと思う。

だがクロエの方はどうだろう。
あのケネスを理想の男と掲げている彼女にとっては、コンラッドなど子供のように見えるだろうに。

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