王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

「もちろん、母親のマデリン妃も、伯父であるアンスバッハ侯爵も、ナサニエル陛下も、その数日のうちに出入りはしている。侍女は代わるがわる頻繁に出入りしているしね」

「じゃあ、ザック様が犯人だなんて決めつけられないじゃないですか。動機だってないですし」

「ないわけではないね。王位継承順は第二位だから。……ただ、いまだ国王が健在であるこのタイミングで、ザックが焦る必要は何ひとつない。病で倒れていたバイロン様が、国王より先に逝去する可能性は高かった。そうなればこの国の法律で、王太子はザックだ。待っていればいずれは転がり込んでくる王位を、今焦って狙う必要はない。そのあたりを主張して、乱暴な理論で彼を犯人に仕立てないようにと守っていくしか、俺にはできないかな」

どこまでもまとわりつくグレーな疑惑を払しょくする手立ては思いつかない。であれば、別の人間が犯人である証拠を出さなければならないのだろう。

いつもは悠々としているケネスも、今回ばかりは少し余裕がないのか、表情が硬い。

「それより……、カイラ様の方はどうなってるんだ? ロザリー、何か聞いてる?」

「あ、……はい。王城に戻る準備が進められています。あの、……それで、今後のことをイートン伯爵と相談するよう言われまして……」
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