王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「マデリンも君の事が気に入っているようだ。今度揃いのドレスを仕立てたいと言っていた。カイラ殿の侍女を辞める話はできているのか?」
「国王様から言っていただくことになっています。カイラ様は主張の強い方ではありませんから、すぐ了承されると思いますわ」
「分かった。それも伝えておこう」
ふたりの会話が終わり、クロエは会場に戻るためかロザリーが隠れているほうへやって来た。
身を隠したままシーと人差し指を立てると、気づいたクロエが、悟られない程度に歩みを遅くし、別方向に歩く侯爵がいなくなるのを待った。
「何してるのよ、ロザリー」
「レイモンドさんのところに行こうと思って……って、あれ」
ふわりと、近づいたクロエの手のひらから香る、彼女以外のにおい。
「このにおい……知ってます」
ロザリーは放心したままつぶやいた。怪訝そうにのぞき込むクロエに、しがみつく。
「これ、オードリーさんの手紙についていたにおいです!」
ザックが解放されて数日たつのに、参考人として連れていかれたはずのオードリーに関しては全く音沙汰がない。
もしかしたら、ずっとアンスバッハ侯爵邸に囚われているのだろうか。
「私、レイモンドさんと話してきます!」
「ちょっと、ロザリー?」
クロエが呼び止める声も聞かず、ロザリーは走り出した。