恋を知らない花~初恋~
廊下に出るとコーヒーの匂いがした。
きっと2人で飲むためにコーヒーを淹れてくれたんだろう…

はぁ、また大きなため息が出る。
このまま玄関へ行って帰りたい…
さすがに仕事関係の人だし挨拶しないとマズいだろうな…
そんな最低な事を考えながらリビングのドアをゆっくり開けた。

「あ、おは、おはようございます。コーヒー飲まれませんか?」

いつもの冴えない真中さんが少し照れている。

「おはようございます。シャワー借りました。私、帰りますので。ありがとうございました。」

いつもの営業スマイルで挨拶をし、頭を下げるとリビングから出て玄関へ向かった。

「えっ?あ、川井さん待って…」

慌てて後を追ってくる足音がきこえる。
私は靴を履くと真中さんに向き直った。

「昨日はごちそうさまでした。とても楽しかったです。ではまた、私帰りますね。失礼します。」

営業スマイルを崩さずそう言いきると、頭を下げ玄関から出ようとした。

「待って、あの…」

とっさに腕をつかまれ引きとめられたので思わず眉間にシワを寄せてしまった…
真中さんはその顔を見て慌てて手を離しうろたえた顔をしている。

「すいません、その、夜のこと…俺…俺なんかがすいません…」

泣きそうな顔して頭を何度も下げる彼にやはり腹が立った。
なぜ謝るのだろう?悪いのは私なのに…
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