恋を知らない花~初恋~
「真中さんは楽しくなかったですか?」

わざととぼけた顔をしてきく。

「あ、いえ、楽しかったです。夢みたいで…」

「フフッ、なら良かった。じゃあ謝らないで下さい。お互い楽しかったんですし。また会社に伺うときは連絡しますね。では、おじゃましました。」

頭を下げると真中さんの顔は見ずに急いで玄関から出た。
ドアが閉まる前に何か言っていたけど振り返らなかった。

可哀想…私みたいな女に手を出されて…
早く忘れられるといいけど…
そう思いながらも傷ついたような表情の真中さんの顔が頭から離れなかった。

その日は土曜日で仕事もなかったので家に帰ってひたすら掃除をし、夕方からはジムに行きいつもより念入りに運動をした。
どんなに頑張っても頭から真中さんが出ていってはくれなかった…
きっと傷つけたから罪悪感が強いんだろう。

夜は外に出る気もせず家でビールを飲み、早めに寝た。
日曜日は家にいるから悪いんだと思い、買い物へ出た。
気になっていたものを見て回り、気づけばかなりの荷物になっていた。

「あれ?結衣?すごい荷物だな。」

呼び止められて振り向くとラフな格好をした拓也がいた。
いつもは仕事帰りの金曜日にしか会わないからスーツ姿かバスローブ姿しか見たことがなかった。
< 30 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop